【LONG AFTER DARK】



 

 

 


まだ少しだけ昼間の名残が残る曇り空。
だんだん薄暗くなっていく林の中を、少年は必死に走っていた。
ポツリと雨粒が頬を打ったような気がする。まだ太陽は沈んではいないのに、重く垂れこめた雨雲のせいで辺りはかなり暗い。
年のころは七、八歳だろうか。粗末なつぎはぎだらけの着物を着ており、裸足で林の中を走っているせいで脛やひざが細かな傷で血だらけだった。

突然少年は襟首を掴まれて、一瞬空に浮く。
首が締り「ぐっ」と声が漏れる。

「捕まえたぞ、このガキ!」
少年の首根っこを捕まえたのは、薄汚い恰好をした年配の男だった。同じような粗野な風貌の別の男が後ろから声をかける。
「見つけたか。ったく手間ぁかけさせやがって。もうすぐ暗くなる。とっとと隠れ家に戻って今夜船をだすぞ」

少年は空に浮いている脚を必死に動かしてもがいた。ここでこいつらの隠れ家に連れ戻されて船に乗せられたらもうおしまいだ。
この人さらい達に、京か江戸で売り飛ばされて二度とこの村にはもどってこれないだろう。
少年は必死に手を振り回して、首根っこを捕まえている男の顔を、ガリッ
と指でひっかいた。
「痛っっ!!!っのガキっっ!!」
男のげんこつが少年の頭を殴り、少年は吹っ飛んだ。
目の前が赤黒く染まり視界がゆがんだが、それでも少年は必死に後ろに後ずさって逃げようとする。
男は無造作に少年の方へ手を伸ばし、再度捕まえようとして……その
まま固まった。
少年は痛みにぼんやりとした視界の中で、驚愕の顔をしている男の顔を見る。少し離れたところにいる別の男も、こちらを指差して薄暗闇でもわかるくらい青い顔をして口をパクパクと開けたり閉めたりしている。

自分の後ろに何かがいる……

少年は、後ろから何か……辺りを圧するような威圧的な気配を感じた。生暖かい空気が後ろから漂っている。
少年は恐々と後ろを振り向いた。



大きな木の陰にある暗闇の中に、確かに何かがいた。


ひっそりと静かな雰囲気にも関わらず周辺の空気をすっかり支配している。草も木も、空気でさえ息を呑んでその生き物の動きを見守っているようだ。
暗くなりかかっているせいでぼんやりと輪郭しか見えないが、目が……緑の二つの目が鋭い光を放ってこちらを見ていた。その瞳も異様だが、彼らが驚いたのは、何
よりもその大きさだった。影の大きさ目の高さが、四足でも大人の男の腰の高さよりも高い。こんなに大きい生き物はクマぐらいしか思いつかないが、その瞳はクマとは思えなかった。クマよりももっと知性のある動物……
一体コレはなんだ、と皆が驚愕のまま見つめている中、その生き物は木陰の暗闇から一歩踏み出した。


夕方の弱い光の中に現れ出たそれは、狼だった。



いや、狼にしてはあまりにも大きすぎる。しかし、その艶やかな濃い茶色の体毛や力強い骨格は明らかに狼だ。

「……」
男たちは青ざめた顔で、突然現れた狼を見ながら後ずさる。
狼は、腰が抜けたように座り込んでいる少年のすぐ後ろまで静かに足をすすめた。
少年はぽかんと口を開けたまま、狼の動きに合わせて首を回した。狼はちらりと(本当にそう見えた)少年を見、すぐに視線を男たちに移す。
狼はちょうど少年を前足の間に挟む様にし、少年の後ろ髪が狼の胸のあたりに触れるくらい近くに来て止まった。


男たちは、以前村人たちの会話を立ち聞きしたときに山の主とかいう狼の話を聞いたことがあった。
とてつもなく大きく、危害を加えられそうになると容赦なく人と襲いかみ殺すとか……
しかし何もせずに立ち去れば人を襲うことはしない。それと裏山の西側の沢……そこに誰かが立ち入ろうとすると狼は襲い掛かってくるらしい。
男たちの隠れ家は裏山の西側にあった。沢の近くではないがこの数日のあいだ山の主には出くわさなかったので、単なる愚かな村人たちの想像の産物だと思っていた
のだが……


今二人の目の前にいるのは、主と言う言葉にふさわしい狼だった。
存在するだけで空気が重く逃げ出したくなる。猛獣の名にふさわしい鋭い犬歯が大きな口の端からチラリと見える。そして何よりも恐ろしいのはその瞳だった。深く
透明な緑で、金色の野性の光が揺らめくその瞳は、あきらかに高い知性があり何もかも見透かしているようだ。
男たちは狼に圧倒されて動くことがほとんできなかった。
「……どうする?ガキはあきらめるか?」
「くっ…!そう言うわけにもいかねぇだろ……!狼に喰われちまえばいいが、生き残って村にでも逃げ込まれたらことだ。」
男は背中に背負うように持っていた日本刀をすらりと抜いた。構え方や刀の誂えから察するに、その男はもともとの武士ではなく刀もどこからかで奪って来たものな
のだろう。しかしその刀の刃は鋭く、夕日の残照にきらりと煌めいた。

「ぐるるるる……」
地の底から響くような音に少年は驚いた。何の音かとあたりを見渡すと、自分の後ろにいる狼の唸り声だ。
男はその唸り声にびくりと体を震わせると、たまらず刀を振りかぶり狼にとびかかる。
少年が思わず目をつぶって頭をかがめた時、ふわっと風が後ろからおこり、背後にあった威圧感が消えた。
少年が驚いて目を見開くと、大きな体に似つかず狼が軽やかに少年を超えて跳躍したところだった。
そのまま一飛びで狼は男にとびかかり、男が振り下ろした刀を軽く避け、刀を持っている方の腕に勢いよく噛みついた。
「うおおおおおっっ!!」
狼にのしかかられ、腕を噛まれて男は刀を取り落し枯葉のなかに倒れこんだ。

狼の唸り声と男の悲鳴が聞こえる。狼にのしかかられた男の体はほとんど見えず狼の大きさが際立つ。男の手首から血が飛び散った。男が必死に転げまわり逃れようとするが狼はまるでハエでも払うようにうるさそうに男の手を避け、歯をむき出しにして大きな口を開けた。狼の緑の目には野生に支配された金色の獰猛な光が浮かぶ。そしてそのまま恐怖で見開いている男の目を見ながら口を男の喉笛へ……

「ダメです!!」

突然響き渡った女性の声が、死の予感が漂う緊迫した空気を破った。
のしかかられていた男の見る前で、狼の緑色の瞳から残虐な色がふっと消える。
声のした方を皆が見ると、村に続く道の方から一人の若い女性が現れた。明るい山吹色の着物を着て艶やかな黒髪を結わずにたらしている。真っ白な肌に黒目がちな瞳、長い睫。華やかな美人と言うわけではないがしっとりと美しい女性だった。その女性は黙ったまま、白いすんなりとした手を狼の方へ向ける。

男を押さえつけていた狼の力がすぅっと抜け、狼はするりと男の脇を通り女性のもとへと向かった。そして甘えるように額を女性の手にこすり付けると彼女の横でこちらに向き直る。
狼が男たちを見て小さく唸ると、その女性は狼の体をなだめるように撫でた。
睨みつけてくる緑の瞳に、男たちは夢から覚めたように立ち上がる。手首を噛まれた男は指の先まで血で真っ赤だった。
「おい……」
「ああ……」
男たちは互いに目配せをすると、気まずそうに狼から目をそらす。そして地べたに座り込んでいる少年の存在など忘れたように、そのまま二人で山へ逃げようと踵を
返した。

「ぐるるるるるるる……!」
その途端狼の唸り声がひどくなる。
「なっなんだよ」
狼にそう言った男に、女性は言った。
「多分……そちらには行くなと言ってるんだと思います」
「山に入るなって?俺たちはあの小屋に……」
「ぐがうっ!」
一声大きく唸った狼に、男たちは飛び上がった。そしてその勢いで山でもない村でもない、街道へと出る道の方へ一目散に走り出したのだった。


「大丈夫でしたか?」
丁寧な言葉づかいに心配そうな瞳、優しい手を差し伸べられて少年は立ち上がった。
少年はおずおずとお礼を言う。
「あ、ありがとう……」
そして狼をチラリとみると、ちょうどこちらを見た狼と目が合う。
狼の緑の瞳に、確かにからかうような楽しんでいるような煌めきが浮かんだのを見て、少年は目を瞬いた。
「……」
無言で狼を見ている少年の背を、女性は優しく押した。
「さあ村へお帰りなさい。もう夜遅くに一人で出歩いたりしない方がいいですよ」
後ろを気にしつつ村へと走っていく少年を、女生と狼はいつまでも見送っていた。







 


山の西側の沢にある雪村の里、その中の自分たちの家に着くと、千鶴は直前に降り出した雨粒を手で着物から払う。そして同じく体をぶるっと震わせて雨粒を払った狼……いや総司に、千鶴は言った。
「もう……!里に降りてはダメですって言っているのに、あんな近くまで来てるなんて……」
そう言いながら総司を見た千鶴は、総司がじと目で自分を見ているのに気が付き言葉を止めた。そして少し気まずそうに続ける。
「……わかってます。私がいけないんですよね、総司さんになにも言わずに里に降りてしまって……。でも総司さんよく眠ってらしたし、ちょっと里に行って聞いて
くるだけだから、起きる前に帰ってこられると思ったんです」
手をもじもじと動かしながら言い訳するように言う千鶴を見て、総司は彼女のそばへと足を進めた。そしてくんくんと彼女の体の匂いを嗅いでいく。
「え?なんですか?」
戸惑ったような千鶴にかまわず匂いを嗅いでいた総司は、ある匂いに気づくと動きを止めた。
緑の瞳にいら立ちのような色が浮かぶと同時に、千鶴は総司に押し倒されて土間の板張りの上にあおむけに横たわっていた。

総司の獣の前足が、千鶴の華奢な手首を右と左で抑える。緑の目を細めて怒ったように自分にのしかかり見下ろしている狼を、千鶴は下から見上げた。
薄暗い部屋は静かで雨粒が屋根を打つ音だけが聞こえてくる。
狼の暖かい吐息が千鶴のうなじをくすぐったとき、彼女は彼の変化を肌で感じた。

「日が沈む………」
千鶴が独り言のように呟くと同時に、自分の手首を押さえつけていた固い狼の足が、暖かく滑らかな皮膚の感触にかわった。彼女の耳元にあった狼特有の固い毛が、
さらさらとした柔らかい髪の毛に変化する。変化した彼がぶるっと全身を震わせたのを、千鶴は下で感じだ。
彼女のうなじからゆっくりと顔をあげる彼を、催眠術にでもかかっているように千鶴は見あげる。

総司は狼から人間へ変化していた。


新月の上に雨まで降りだしているせいで周囲は暗く、顔はほとんど見えない。
でも彼の気配や雰囲気が既に狼のそれとは異なっていた。
暗闇の中でも光っている緑の瞳だけが同じだった。

「総司さん……」
何も言わない彼に、千鶴は焦れたように言った。総司は返事をせずに、相変わらず千鶴の両手首を今度は人間の手で抑え上にのしかかったままだ。
「……声を、聴かせてください……」
千鶴の心からこぼれた切ない言葉が、雨粒の音と共に暗い家の中に響いた。
総司が人間に戻れるのは新月の夜のみ。
彼の艶やかな声を聞くことができるのは、だから新月の夜、太陽が沈みまた昇る間だけだ。
千鶴の懇願が聞こえているのかいないのか、総司は再び匂いを嗅ぐように千鶴のうなじに鼻をよせる。

「……他の男の匂いがする」
久しぶりの彼の声……
千鶴の体の奥が熱くなる。しかしその内容が頭に染み渡ると今度は一気に冷たくなった。
「ほ、他の男って……」
嫉妬の匂いがする総司の口調に、千鶴は焦った。総司が勘ぐるようなことは、村では何もなかったと……そこまで考えて千鶴ははっと気づく。
「あ、そういえばつまずいて転びそうになったところを、薬売りの男性に助けてもらって……」
抱き留められた。その匂いがまだ残っていたのだろうか。
「……僕をおいて勝手に村に行って、他の男の匂いをつけてくるなんていい度胸だね」
真剣に怒っているのかからかっているのか、暗闇の中表情が見えないため声だけではわからない。
千鶴は小さな声で、ごめんなさい、と謝った。

「……まだ、探してるの。僕を人間に戻す薬」
「きっとあると思うんです」
「新月の夜だけじゃ不満?」
「……」
千鶴は黙り込む。上で総司が苦笑いをしたような気配を感じた。
「君が気に病むことはないんだ。これは僕が決めたことで、僕は後悔してないんだから」
以前にも聞いたことがある台詞と全く同じ言葉。千鶴は見えないながらも総司を見上げる。
総司は続けた。
「風間からもらった怪しい薬を飲んだのはね、たとえ人間じゃなくなったとしても君と一緒に少しでも長く過ごしたいと僕が願ったからなんだ。飲んだおかげで労咳
は治った。羅刹の毒も抜けた。何か体に変化がある筈って言われていた副作用は、狼に変化するっていうとんでもないものだったけど……それでも新月の夜だけはこうして……」
総司はそう言いながら千鶴の手首にあった手をそっと撫でるように肩の方へとはわせる。その感触に千鶴はゾクリと全身が泡立つように感じた。
「……こうして君に触れることができる」

最後の言葉は低い声で甘くささやくように総司は言う。
それと同時に総司は、千鶴の唇に唇が触れるか触れないかの距離までゆっくりと頭を下げた。
総司の吐息が千鶴の唇をかすめる。
甘い期待で千鶴の胸は躍った。思わず自分から求めるように首をそらしてしまう。
総司はからかうように彼女の唇に少し触れると、またすぐ離してしまった。
千鶴は追い求めて首をあげる。
そんなことを数回くりかえすと、総司がくすっと笑ったのが聞こえた。
口づけが欲しくて夢中だった千鶴は、はっと我に返り顔を赤くする。

「……意地悪、しないでください……」
拗ねるように言う千鶴の声に、総司は体が熱くなるのを感じた。手に汗がにじみ心臓がはねる。しかしそんな自分を楽しむ様に彼は言った。
「…口づけをして欲しいの?」
暗闇の中でも、狼の特性なのか総司には千鶴がコクンとうなずくのがはっきりと見えた。
はやる心を抑えてさらに焦らすように言う。
「……じゃあ、口をあけて……」
素直に柔らかそうな唇を開ける千鶴を、総司は目を細めて見た。
総司が言った動作を千鶴は素直にしただけなのだが、その光景はかなり淫らで……正直我慢するのはキツイ。

ウサギを捕まえた狼のように襲い掛かり、何もかも無茶苦茶に食べつくしてしまいたい欲望が総司の腹の底から湧き上ってきた。
熱い吐息を何度も細かく吐き、なんとかその衝動を抑えて、総司は千鶴と自分を焦らすようにゆっくりと舌をだし、彼女の開いている快楽への入口へ入れた。
「…あ……」
望んでいたものを与えられた満足感と刺激に、彼女の体が小さく震える。
総司は彼女の柔らかな舌を、自分の舌で絡めて何度も何度も撫でて愛撫をした。
愛しい女の体の中に入り、彼女の真ん中に触れている感覚。
触れるたびに敏感な反応が帰って来る彼女の体を、総司は全身で感じていた。千鶴は総司に触れたくて手首を動かし離してくれるよう訴えるが、総司はきかなかった。そのまま手首を押さえつけて動けないようにして、思う存分貪る。


雨が屋根を打つ音、外の木々のかすかなざわめき、そして口づけの合間にこぼれる熱い溜息とくちゅりという水音……
暫くはそれが暗闇を支配していた。

長く続いた口づけが終わり、ようやく総司は唇を離す。
そして自分の下にいる千鶴を見た。
紅潮した頬、潤んだ瞳、大きく上下する胸……
「……色っぽいね……」
総司がつぶやいた。
「……わ、私には暗くて……総司さんがぼんやりとしか見えなくて……残念です…」
か細い声が告げる。
「狼になったせいで夜目は効くね。あとは匂いも……」
「……まだ他の男性の匂いがしますか……?」
千鶴はぼんやりと、先ほど言われたことを聞いた。総司はゆっくりと首をふる。
「もうしない。今は……」
総司はそう言いながら片方の手を千鶴の着物の合わせ目からするりと滑り込ませた。
「…あっ…」
十分な口づけで、すっかり敏感になっていた千鶴は、胸から全身へと電流のようなしびれが流れて背をそらせた。
総司はそれを満足気に見ながら胸をまさぐり、言った。


「……今は発情した雌の匂いがする」

 

 

 


明け方に雨はあがったようだった。
屋根を打つ雨音も聞こえず、外では早起きの鳥が鳴いている声が聞こえる。
まだ太陽は昇っていないが、空はうっすらと明るくなり、その光が雪村の里の小さな家の中にも届いていた。

隣で眠っている男性の顔を、千鶴は食い入るように見つめていた。

茶色の柔らかな髪に、長い睫。きれいな二重瞼。
鼻筋はすっきりと通り、そのせいで女性のような繊細さを顔立ちに加えている。
けれども顎から首にかけてのごつごつとしたラインが、彼がまごうこと無き男性であることを表していた。
薄い唇は今はかすかにあけられて、気持ちよさそうな吐息が定期的に漏れている。
滑らかに筋肉がついた肩には千鶴の頭がのせられており、反対の手がしっかりと千鶴の腰にまわされていた。
暖かな脚をお互いに絡め、決して離れないように二人は抱き合っていた。

どれだけ見ても見飽きることはない、千鶴にとってただ一人の男性。
労咳や羅刹という運命すらも、特に抗うことなくさらりと受け入れてしまう総司だから、きっとこんな状況も特に苦悩せずに受け入れてしまっているのだろう。
昔から自分の体のことにはとことん興味がなく、いつも新選組や近藤のことばかりを考えていた。
自己犠牲なんてことを思いもせずに、彼は守りたいもののために自分の血を簡単に流す。
今はその「守りたいもの」が千鶴なのだと、彼女にはわかっていた。
千鶴のためなら命を削ることも捨てることも、……こうやって人外の存在になることすらいとわない。
そんな総司だからこそ、千鶴が守ってやらなくてはいけないと思うのだ。

狼から人間に戻るための薬は、確かに存在すると風間は言っていた。
千鶴は必死でそれを探しており、昨日も大陸からの薬売りが村に逗留していると聞いて一人で行ってみたのだった。
結果としてたいした成果はなかったが、千鶴はあきらめるつもりはなかった。
必ず総司のために薬を手に入れようと心に決めている。

そんなことを言うときっと彼は笑うだろう。

からかうように楽しそうに。
自分の事なのにまるで他人の事のように。




総司の笑顔を思い浮かべて、千鶴の唇にも優しい微笑みが浮かんだ。


あと少しだけ彼を見つめてていよう。 



あと少し、太陽がのぼるまで……









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